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【ゲーム】デトロイト クリア&トロコン完了【Detroit: Become Human】

 7月のPSplusフリプのデトロイト・ビカム・ヒューマンのトロコン完了。

 おおざっぱに三週分くらいはしたと思うのでおよそ25~30時間くらい。

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トロコン。取得率1.3%と人気の割にかなり少ない。フリプ配布の影響か。

交錯する三体の運命 

 コナーカーラマーカスという三人のアンドロイドが織りなす物語は、ちょっとした行動の有無によって細かく分岐が発生するため、繰り返しプレイしても飽きることがなかった。

 通しでプレイして一番面白かったのはアンドロイド捜査官コナーとその相棒となる人間の刑事ハンクの物語。他の二人にも言えることだけれど、コナーとハンクのストーリーは海外警察ドラマの文法がそこかしこに見えて、そのまま実写化してもおかしくなさそう。

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いがみ合う二人が少しずつ距離を縮めていく。

 ハンクは過去に息子を失っており、そこにアンドロイドが間接的に加わっていたこともありアンドロイドに対して複雑な感情を抱いている。当然コナーと組まされたときは不快を隠さないが、(プレイヤーの選択によって)二人で事件を解決し困難を乗り越えていくことで少しずつ溝を埋め、「アンドロイドもまた生きている」とコナーを受け容れていく。好感度が上がり互いに生き残った状態で迎えるエンディングは短くもぐっとくるものがあった。

 コナーの章が「人とアンドロイドの関係」であるとすれば、カーラの章は「家族としてのアンドロイドの姿」を描いている。

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アリスと逃げていく中でカーラは「母親」として目覚めていく。

 アリスという「子供」を抱えている以上、カーラはどんな切迫した状況でも、家族(アリス)を守ること、他人を犠牲にすること、それを見るアリスとの間で思い悩むことになる。

 アリスは可愛らしい娘だけれど、現実の子どもがそうであるように子どもゆえの面倒がある。どんな危険な状況でも家族(たとえばルーサー)を助けてほしいし、困っている人を見捨てて欲しくない。彼女を連れて行く中でプレイヤーは「親」として、子どもを守ることの面倒をも背負わされることになる。

 そんなアリスの「素直な我がまま」に苛立つこともあるだろうが、プレイ後は自然とその面倒を受け容れられるように、少なくとも自分はなった。その過程は人とアンドロイドとの違いなどないまさしく家族の物語であり、プレイヤーはこれがアンドロイドの物語であることを忘れてしまうかもしれない。

 マーカスの章はずばり「アンドロイドの自由」。人間に創り出された奴隷という状態を抜け出すため、生存権、人間社会で平等な権利を持った種族として生きられるように奮闘する。

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平和的デモで自由を勝ち取る。物語後半は彼を中心に回る。

 製作者的にもアンドロイドの物語としてもおそらくはマーカスの章が中心に作られているのだろう。コナーは追跡者として、カーラは彼を頼る形でマーカスに関わっていく。

 独立した種族として自我を抱いてからアンドロイドたちの隠れ家「ジェリコ」へたどり着き、そこからデモ(あるいは暴力)を通して自由のために戦うというストーリーは古典SF的で、その根底にある定式的なリベラル思想はやや浮世離れしていて、他の二人の物語と比べると没入感はあまりなかった。ノースとの恋愛イベントも取ってつけた感じ。

 ただ自由のためには暴力も辞さないか、あくまで平和的に行動するかという選択を前に、異なるの価値観を持つ人物たちの中で思い悩んでいると、いかに自分が都合よく考えをころころ変えている人間か思い知らされる。

 選択の結果起こった反応を見るたびに後悔したり、悩んだりするのは結局自分が行動に信念を持ち合わせていないからだ。集団を率いるリーダーとして行動するマーカスの選択は一歩間違えれば全滅を引き起こすこともあってひときわ緊張感があった。

トロコンは簡単だがシステムに難あり

 トロコン自体はどれも難しいものではなく、チャプターごとにやり直せるので楽ではある。ただ複数のチャプターに跨って展開するもの(たとえば雑誌の内容や人物の特定の運命など)もあるので最大効率を求めるとなると相応に試行錯誤が必要だろう。

「復活」のトロフィーを取るためには毎回コナーが任務に失敗して死亡する必要があるが、その度にアマンダやコナーの視線が痛ましく感じられてなかなかいたたまれない気分になった。

 システムとしては既プレイシーンでもスキップできないのが面倒。総プレイ時間を引き延ばすためかもしれないが、操作感もリアル寄りで時折もどかしい部分があるから少しストレスがたまる。

 ゲーム操作の根幹にあるQTEは最初は面倒に感じたものの、話が進むにつれてそれほど気にならなくなった。やや誤爆が起きやすいのと、プレイする姿勢によっては落ち着かないこともあった。それでも特に後半のめまぐるしい戦闘シーンとかはSekiro感あって面白かった。

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通常行動も戦闘も全てQTEで行う。タイミングは結構シビア。

総評:アクションアドベンチャーの丁寧な傑作

 間違いなく良作。比較的マイナージャンルの作品を一般向けに押し上げている。

 自分の選択がじかに物語を変えていくという感覚が、テーマ性のあるシナリオと丁寧な細部によって味わえる。この手のゲームには苦手意識があったけれど現行機のクオリティのおかげでかなり万人向けになっていたと思う。上述のような操作やシステムの難こそあれ、ストーリーに引っ張られる形で次第にゲームに没入できる。

 制作スタジオ、クァンティック・ドリームはこれまでもアドベンチャーを造り続けてきたが、この先も同じ路線をさらに発展させていくんだろうか。その際にはコントローラーやプレイ環境の進化にも期待したい。操作キャラとプレイヤーを同期させようとする努力は垣間見えたけれど、やはり今のコントローラーの限界を感じた部分もあった。