【ゲーム】ファイナルファンタジー7リメイク【Final Fantasy Ⅶ Remake】
期待していたようなしていないような、とにかく今年の和ゲー最大の話題作、FF7リメイクが4月に発売。中断を挟んで先日ようやくクリアした。約40時間、トロフィー53%。
自分は7の原作を少ししか遊んでおらずそれほど思い入れはないけれど、やはりやっておかねばということで。
破格のスケールのリメイク
FFシリーズの中でも海外を含め特に人気のある「Ⅶ」ということもあって、リメイクにかけられた労力も凄まじいものがある。
舞台となる魔晄都市ミッドガルはそのまま今作の世界観となっており、その作り込みの細かさが舞台設定に説得力を与えている。
ミッドガルは一企業である神羅カンパニーが手掛けた人工都市で、上層と下層に大きく分かれている。物語の中心となるのが下層に当たるスラム区。整備の行き届いた上層に比べてスラムは猥雑さに溢れており、画面の向こうからその汚さ、澱んだ空気感が伝わってくる。
中でも六番街スラム、ウォール・マーケットが素晴らしい。夜のネオンで照らされた街の様子は、往年のサイバーパンク映画、特に『ブレードランナー』(1982年)のよう。FF7の発売は1997年(23年前!)だが、その頃の香港や台湾といったある程度発展したアジア各国の都市の雰囲気を彷彿とさせる。あるいは海外から見たアジアのイメージを逆輸入したかのような。
基本的に日本語、特に漢字が使われているのも雰囲気を作っている。看板に見られるように「ダサく」見える時もあるけれど、その独特の造形は異世界感を醸し出す。
他細かいところを上げればきりがないくらいに作り込まれている。ロケーションとしては伍番街スラムのエアリスの家、プレート落下後の崩壊した街並みや上層から見下ろした景色などは息を呑むほど美しい。
物語は基本リニア形式だが、特にスラム区はオープンフィールドのように繋がっている。地域全体ではなく一エリアに焦点を当てて作り込む形式が上手くはまっている。
グラフィックは相変わらず美麗で、イベントシーンも多いが必ずしも「ムービーゲー」にはなっていない。特に終盤になるとバトルが続いて少し休みたいと思ったところで絶妙にイベントが入ってくれるなどバランスがうまく取れている。
シナリオとキャラクターのかみ合わせ
元々キャラクター人気の高い作品だが、大幅に強化された表現力によってその魅力がさらに際立った。
主人公クラウドの人物造形は本当に秀逸。確かな実力がある一方で性格面で非常に隙が多い姿は実に魅力がある。
自分の力をそれとなく誇らしげにする一方、それを指摘されると上手く取り繕えず押し黙ってしまう。人間関係は女性に限らず全般的に苦手、奥手。クールを気取っている様でそれは空気の読めなさでしかない(だからバレットへのつっこみはハマっても、エアリスにはあしらわれる)。格好を付けようとすればするほど露見してしまう未熟さは、思春期の少年のよう。
それでも記号化された「中二キャラ」に見えないのは、その絶妙な性格のバランス配分とシナリオとの親和性ゆえだろうか。
彼を取り巻く二人のヒロインがティファとエアリス。
それほどFF7について知らない自分には同人誌の人という印象の方が強いティファだが、物語では彼女の鬱屈した部分、アバランチの活動への躊躇や意志の弱さが示される。ストーリー内でも彼女は常に誰かの支えを必要としており、拳を武器にやたら扇情的な衣装で画面内を飛び回る姿とは対照的。
エアリスはその対蹠として描かれる。クラウドにとって他者として現れた彼女は、ティファと正反対の後衛スタイルにもかかわらず、仲間や物語を先導していく役割を果たす。
クラウドは仲間との出会いを通して変わっていくが、エアリスが果たす役割が最も大きい。バレットもティファも、クラウドを認めつつもその内面には踏み込もうとしないが、エアリスは躊躇なくクラウドに近づいて行く(もちろん理由はあるのだが)。
彼女に感化されるようにティファも変わっていくが、この二人の関係性はライバル的でも同志的でもあり、クラウドを軸に程よい距離でまとまっていた。
そしてアバランチのリーダー、バレット。
打倒神羅の目的のためなら手段を選ばない、犠牲をも厭わないワンマンリーダーだが、誰よりも仲間(家族)想い。その個性の強さで特に序盤は物語を牽引する。
仲間を率いる立場上、ひたすら個を生きるクラウドとは当然対立する。ティファという中間を挟んで二人は両極に描かれているが、その距離が次第に縮まっていくのもストーリーの醍醐味。仲間を求めるバレットも、一人で生きて行こうとするクラウドも、根っこのところでは同じような孤独を抱えていたのかもしれない。
ちなみに娘のマリンはひたすらかわいい。
今作ではゲスト扱いだが、終盤にはレッドXIIIも登場。ギミックのレバーを動かす様は必見。
ストーリーは伍番魔晄炉爆破までの序盤、エアリスとの再会~プレート落下までの中盤、そして神羅ビル侵入の終盤と構成的にまとまっていて、それぞれに緩急が非常によくつけられていた。
神羅という敵を巡ってのクラウドと仲間たちとの出会い、ジェシー他アバランチメンバーとのイベントなどで彼らに愛着を持ったタイミングで一度離脱し、エアリスという他者を通して主人公を別の側面から捉え直す。そしてコルネオイベントからの道中で二人のヒロインの魅力を堪能し、プレート落下後の惨状と地下施設探索を通じて神羅の闇が明らかになり、そしてエアリスを助けるために神羅へ乗り込んだ先で、本当に戦うべき相手を知る。まったく、良く出来たシナリオ。
このシナリオの中に魅力的なキャラクターが細かく振り分けられ、それぞれに見せ場と掘り下げが行われている。この辺りは分作という怪我の功名(?)で、登場人物を絞ることで一人一人に焦点を当てることができている。
上にも書いたけど全体を通してイベントに入るタイミングがいい。今作のバトルはシステム上一戦一戦がなかなか疲れるので(最適解を引かないとボス戦は長引きがち)この塩梅は非常に良かった。
爽快感と戦略性を兼ねたアクション
毎回新機軸を入れてくるFFシリーズのバトルシステムだが、今回は分かりやすくかつ程よい戦略性があって面白かった。
基本はアクションなのだが、いつでも自分の操作だけでどうにかなるわけではなく、たとえばクラウドではガード→カウンターが重要になるなど臨機応変な対応が必要。敵の攻撃は反射で避けられるものもあるが、一部の魔法や攻撃は避けられない。
序盤や低難易度ならボタン連打のごり押しで何とかなるが、ノーマルの中盤以降やハードでは立ち回り以上にキャラクターの役割分担や攻撃方法、タイミングまで考えないと、戦闘が長引いたり思わぬ苦戦を招いたりする。
今作のバトルには自分の攻撃→敵の反撃→反撃への対処→また攻撃、のようなターン制の流れがある。一部ボスには特殊な対応が必要になりもするが、やはりこの流れは同じで、それをいかに一方的にもっていくかが工夫のしどころ。
固い敵やボスは的確にバーストさせることで撃破時間が大きく変わる。そのあたりはFF13の詰将棋的なシステムに似ている。乱戦になった時のカオスはFF15並なので対処が大変だが、慣れれば慣れるほど面白くなるし、マテリアの使い方如何で様々に攻略法が考えられる。
アクションとして見ても出来はよく、特にティファなどは動き自体が面白いので直感的に操作しても楽しめた。
その他、周辺
途中で発生するなんでも屋クエストなどはボリュームの水増し感こそ強いが、ストーリーの練り込まれたものもあり、スラム民の生活を垣間見られる。
各種のミニゲームは正直あっても無くてもという感じ。バイクゲームやダーツは面白いが、一度クリアすれば十分(両方トロフィーが関わる)。少なくともFF8のカードゲームのように、ゲームの進行に支障をきたすレベルのミニゲームはない。
蜜蜂の館でのダンスはとにかく踊っている二人が邪魔で上手くできない。映像演出は良かったしイベントとしても面白いのだが、ゲームとして根本的に何かおかしい気がした。
ステージギミックも面倒が勝った部分の方が多い。特にエアリスと地下道を抜ける場面でのロボットアームは、これのせいで一時ゲームを積んでしまったほど。流石に辛抱が足らない気もするけれど、それくらい苦痛だった。
ついでのようになってしまったが音楽は絶品。個人的に好きなのは『すりつぶねじりキル』。
傑作FF7の良質なリメイク
最初に書いた通り自分は原作をほとんどプレイしていないので、原作と比べての評価はできない。
それを踏まえた上でリメイクは素晴らしい作品だったし、分作と聞いて思い浮かべいたほどにボリュームは薄くなく、むしろメインストーリーの作り込みは十分一つの作品と呼べるものだった。きちんと二時間濃密に作られた、三部作映画の一本目のような。
残念なのはやはり次作発売の目処が全く立っていないこと。この先はミッドガルの外に出るが、果たしてそれをどう表現するのか期待したいところ。
原作に思い入れの無いフラットなプレイヤーから見て、極めて良くまとまった良作だった。「あのFF7だから」ここまでできた部分はあるだろうけれど、最近いまいちな評判が続いたスクエニ製ゲームの中で群を抜いていた。